日本食の健康の源アスペルギルスオリゼーってなに?
2017/10/07
目次
和食がユネスコ無形文化財。日本食が健康に良い証拠なし
2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。和食の4つの特徴としては
- 多彩で新鮮な食材からなり、素材の持ち味を生かした調理技術や調理道具が発達している。
- 自然の美しさや季節感あふれる料理や器。
- 年中行事と密接にかかわっている。
- 動物性油脂の少ない理想的な栄養バランス。長寿や肥満防止に役立つ健康的な料理であること。
( 農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/index.html )
日本人の平均寿命が世界一、二を争こともあるため和食は健康に良いといわれています。
しかし同じ無形文化財である「地中海料理」と比較すると健康や寿命の観点から優秀であるという証拠が圧倒的に少ないのです。
日本食は健康!秘密は麹!アスペルギルスオリゼー!
東北大学の都築准教授らのグループは食生活が安定した1960年代から年代別に日本で日常的に食べられてきた食事の特徴を分析し、再現した日常食を粉末化しマウスに食べさせたそうです。
その結果、1960年、1975年、1990年、2005年の食事のうちで一番1975年の食事が健康的だということがわかりました。マウスたちは内臓脂肪がたまりにくく認知機能も良好だったそうです。
この結果を受けて研究グループは1975年型の日本食を再現した結果、軽度肥満者のBMIや体重は減少し、健常人はストレスが軽減し、運動機能が向上したそうです。
では1975年の日本食とはどのような特徴があったのでしょうか?
その日本食の特徴は発酵食品の摂取量が多いということでした。
東北大学のチームの食事メニューを京都大学の佐藤教授が分析したところ、
「味噌、醤油、日本酒といった麹菌を用いた発酵食品の摂取量がほかの時期の食事と比べて多い。」
ということに気づいたのです。
日本食の健康の源は麹菌になるといえるのではないでしょうか?
日本の代表的な麹菌はアスペルギルスオリゼー。
アスペルギルス・オリゼー、日本名を黄麹菌と言います。
麹菌の代表選手で味噌、醤油、みりん、日本酒、酢などを作るときの発酵に使う菌です。「ニホンコウジカビ」とも呼ばれています。2005年麹菌の全遺伝子配列が解読され、翌年2006年、日本醸造学会は、このアスペルギルスオリゼーを日本の貴重な財産であると考え「国菌」に認定しました。
アスペルギルスオリゼーはイネ科の学名「オリザ Oryza」から命名されました。米麹から発見されたためです。黄色の麹菌なので黄麹菌ともよばれます。
アスペルギルスオリゼーは日本にしかない麹菌です。そして麹菌を伝統的に利用してきた国は日本だけです。
今から1000年ほど前鎌倉時代に蒸した米の上でカビを育てる種麴屋という職業ができました。種麴屋は世界最古のバイオビジネスですね。
アスペルギルスオリゼーはうまみや栄養価を高める!
アスペルギルスオリゼーはおいしさと 栄養価を高める
味噌や醤油はアスペルギルスオリゼーで発酵させた食品です。「発酵」は「腐敗」と違い、食品の美味しさや栄養価を高めます。発酵によって食品は保存しやすくなるだけでなく元の食材よりも優れた栄養価が生まれるのです。味噌汁を飲む人は胃がんや乳がんになりにくいといわれています。
栄養ドリンクなどなかった江戸時代甘酒は夏バテ予防の飲み物でした。甘酒もアスペルギルスオリゼーによる発酵食品です。甘酒は飲む点滴ともよばれ原材料である米を遥かに凌ぐ栄養価があるのです。
最近噂の調味料「塩麹」もアスペルギルスオリゼーと塩と水の調味料ですが健康にもよいと注目されるようになりました。
医薬品や化粧品にも!アスペルギルスオリゼーの効果
アスペルギルスオリゼーが作り出す成分は医薬品や化粧品にも利用されています。
医薬品タカジアスターゼは胃薬や消化材として多くの薬品の有効成分となっています。タカジアスターゼとは、高峰譲吉がアスペルギルスオリゼーから創製した消化酵素で、譲吉は「近代バイオテクノロジーの父」といわれています。世界中で100年以上使われ続けている薬はタカジアスターゼ、アドレナリン、アスピリンの3つですが、タカジアスターゼとアドレナリンは日本人・高峰譲吉の功績によるものなのです!
昔から麹を扱う人の手が白くて美しいことから麹の美白効果に注目をした化粧品も多く販売されています。
まとめ
和食は健康的であるといわれているが、年代別に調べていくと、1975年ころの日本の日常的な食事が一番健康的であることがわかった。その頃の日本食の特徴は発酵食品が多かった。
他の年代と比べて味噌、醤油、日本酒など麹菌が多く使われていたのだ。
日本の麹菌はアスペルギルスオリゼー(黄麹菌)とよばれ、2006年に日本の貴重な財産であると考えられ「国菌」に認定された。
アスペルギルスオリゼーは日本にしかない。
麹菌は発酵させた食品の栄養価を高めてくれるほか、医薬品や化粧品にも利用されている。